お互いが認め合い、助け合える環境づくり
森のようちえんの特徴として、週に2,3回の山の散歩がある。わたしは取材をするため、私はこども達と一緒に山の散歩へ同行した。
大人から見てもかなりハードな山道をこども達は慣れたようにスタスタと進んでいく。わたしが前に進むのがやっとな中で、こども達は野いちごや木の実を見つけて味見してみたり、後方の自分より年下のこどもを気遣ったり、面白い形の葉っぱや木の枝を集めたりしていた。
やっと、折り返し地点の原っぱに到着したところで、お弁当を食べていると、近所のおじさんがミカンを差し入れに持ってきてくれた。
こどもたちも大喜びでおじさんを囲む。
見ず知らずのお年寄りが親しく接する光景は街中や都会ではではめずらしい。このような関わり合いはこどもたちにとってとてもいい影響をもたらすと京井さんは言う。
「お年寄りのことを小学生がバカにする、という行動は社会的に核家族化の流れが少なくとも影響していて、そんな中で自然にお年寄りと接することができることは、園舎をもたない森のようちえんだからこそではないかと思う」
しかし、園舎をもたない森のようちえんだからこそ、当日の天候によって予定が変更されることも少なくない。このような場合、集合場所の変更や送り迎えについて運営スタッフと保護者との連携が必要になってくるが、こうした手間に感じてしまうことも保護者は協力的だ。このスタイルが成り立つのも、森のようちえんの理念に賛同し、主体的に保育に関わろうとする保護者の意識が高いからだろう。
だからこそ、一般の保育施設の保育者と保護者との関係とは少し異なる信頼関係がここでは築かれている。
野外保育ゆたかでは、よくあるPTAのような役割も決めていないそうだ。子育てが落ち着いてきた家庭や、生まれたての赤ちゃんがいて子育てに余裕がない家庭など、様々な状況の家庭がお互い助け合っている。あくまで有志で取り組むのだ。それぞれの各家庭の環境が違うなかで、平等に役割をこなすのは難しい。それをお互いが認め合って、助け合える環境がここにはある。
こども達がより良い環境で育つ場所としてはもちろん、子育ての悩みやノウハウを共有できるコミュニティとして、野外保育ゆたかは静岡の中でも一歩進んだスタイルとして注目を集めている。